腰部の後遺障害
腰は上半身と下半身をつなぐ大切な部位です。腰の骨である腰椎には神経も通っているため、ケガの程度によっては神経が圧迫されたり、神経が損傷したりして痛みやしびれ、下半身の麻痺などの症状が現れることもあります。ここでは腰のケガによって起き得る後遺障害やその後遺障害等級について解説します。
腰部の後遺障害の種類
腰部(腰)は腰椎という5つの骨に支えられた構造になっています。
また、腰椎は脊椎(いわゆる背骨)の一部であり、その中には脊髄という中枢神経が通っています。
そのため、事故によって腰椎がダメージを受けると脊髄が圧迫されて神経症状が出ることもあります。またケガの影響で脊髄が損傷すると、重大な後遺症が出る可能性もあります。
腰椎捻挫・椎間板ヘルニア
腰椎捻挫は、骨と骨をつなぐ部分が損傷・炎症を起こすなどした状態です。ケガの影響で神経が圧迫されると、痛みなどの神経症状も現れます。
一方、椎間板ヘルニアは椎間板が飛び出して起きる症状をいいます。
椎間板は骨と骨をつなぐクッションの役割をしている部位です。
そして、事故の衝撃などによって椎間板の一部が飛び出してしまうのが椎間板ヘルニアです。それによって神経を圧迫されると痛みやしびれなどの症状が現れます。
腰椎捻挫や椎間板ヘルニアによる後遺症が残った場合、後遺障害等級12級・14級が認められる可能性があります。
- ・12級13号
局部にしびれなど頑固な神経症状がある場合 - ・14級9号
局部に神経症状が残っている場合
腰椎圧迫骨折
外部からの圧迫によって、圧迫骨折してしまうこともあります。この骨折にはつぶされたように変形する場合も含みます。
特に骨密度が低下している人の場合、ちょっとした衝撃で圧迫骨折してしまう可能性があります。軽い衝突事故でも起きる可能性がありますので、事故にあったら必ず病院で診察してもらうようにしましょう。
腰椎圧迫骨折では強い痛みなどの症状が現れます。また、骨折した部位がきれいに治らず、背骨が曲がってしまうこともあります。
腰椎圧迫骨折をした場合に認められる可能性がある後遺障害等級は、6級、8級、11級です。なお、骨折した場合、骨が折れている状態ですから少なくとも骨が「変形」したということで11級7号は認められる可能性が高いです。
- ・11級7号
骨が変形した場合 - ・8級2号
骨折した結果、多少の運動障害が残った場合 - ・6級5号
骨折した結果、背骨が著しく変形または著しい運動障害が残った場合
腰椎損傷
腰椎を骨折するなどした結果、腰椎の中にある脊髄を損傷すると腰から下の部分の感覚機能・運動機能が失われ、深刻な障害が発生します。
腰椎を損傷した場合、1、2、3、5、7、9、12級です。
下肢が麻痺して日常生活で常時介護が必要になった場合は1級、随時介護が必要な場合は2級が認定されます。
そのほかの等級の認定基準は以下の通りです。
- ・3級3号
両足に麻痺が残って働けなくなった場合 - ・5級2号
片足が動かせない、あるいは両足に麻痺が残った結果、きわめて軽易な労務しかできない場合 - ・7級4号
片足に麻痺が残って杖がないと生活できず、軽易な労務しか就労できない場合 - ・9級10号
片足に少し麻痺が残り、就労自体はできるものの職種が制限される場合 - ・12級13号
広範囲にわたる感覚障害、あるいは軽微な麻痺が残った結果、ときどき仕事にも支障が出る可能性がある場合
腰部のケガによる神経症状と後遺障害認定
腰部をケガした場合、脊髄が圧迫されて神経症状が出ることがあります。
しかも神経症状は外から見てわからない症状だけに、後遺障害の認定をめぐって問題が起きることも珍しくありません。
自覚症状の発生が事故の様子やMRIやレントゲンの所見から説明できる場合は認められやすいのですが、そうでない場合は自覚症状が事故によるものであることを医学的に証明する必要があります。
また、過去にヘルニアなどの既往歴がある場合は「今の症状が本当に事故によって生じたものなのか」という事故との因果関係が問題になりがちです。
交通事故の後遺障害の相談は弁護士に
交通事故で後遺症が残った場合、適切な補償を受けるためには後遺症に見合った後遺障害等級認定を受けることが大切です。
つらい症状があるのに認めてもらえないなど、もしお困りのことがありましたら一度ご相談いただければと思います。