首の後遺障害
事故の衝撃で首に大きな力が加わった結果、首の骨・神経に損傷が起きることがあります。ここでは首のケガによって起きる可能性のある後遺症とその後遺障害等級について解説します。
首の後遺障害について
首は頭を支える骨(頚椎)があるだけでなく、脳と体をつなぐ脊髄・神経根といった重要な神経が通っている部位です。
それだけに交通事故による首のケガがもたらす影響は深刻といえます。
骨の変形・骨折といった骨の損傷にとどまらず、頚椎の中にある神経がダメージを受けるケースもあるからです。たとえば脊髄が損傷した場合は首から下が麻痺するなど重篤な後遺症が現れる可能性があります。
事故の後遺症に対する補償を受けるためには、症状に応じた後遺障害等級を受けることが大切です。以下、首をケガした場合に現れる可能性のある後遺障害およびその後遺障害等級について紹介します。
頚椎骨折等
上述したように、頚椎は脊椎の一部です。そのため、頚椎を骨折などした結果、治療をしても原状回復しなかった場合には、後遺障害が認められる場合があります。
頸部骨折等による後遺障害で認定される可能性のある等級としては、6級5号、8級2号、11級7号があります。
- ・6級5号
圧迫骨折等によって脊柱に著しい変形または運動障害を残す場合 - ・8級2号
圧迫骨折等が原因で脊柱に運動障害を残す場合 - ・11級7号
圧迫骨折等脊柱に変形を残す場合
変形とは、MRIなどの画像診断で圧迫骨折等が確認できるケースで、脊柱が後ろや横に曲がってしまった場合をいいます。曲がり方がひどいほど症状が重い、ということで上の等級が認定されます。
また、運動障害とは、脊椎圧迫骨折等によって、首の可動域が狭まっている状態をいいます。
注意しなければならないのは、これらの変形や運動障害で後遺障害等級認定を受けるためには、骨折等のあることが画像診断で認められる必要があるということです。画像診断で骨折等が確認できないと、変形や運動障害があっても後遺障害として認めてもらえません。
頚髄損傷
頚椎をはじめとする背中の骨には脊髄という中枢神経が通っています。
この神経は脳と体をつないでいるため、損傷してしまうと重篤な後遺症が残りやすいという特徴があります。特に、首は脳に近いため、首から下が動かせなくなるなどの症状が起きることもあります。
頚髄(脊髄のうち頚椎にあるもの)を損傷した場合、症状に応じて次のような後遺障害等級が認定されます。
- ・1級1号
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要する場合 - ・2級1号
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要する場合 - ・3級3号
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができない場合 - ・5級2号
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に簡易な労務以外の労務に服することができない場合 - ・7級4号
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、簡易な労務以外の労務に服することができない場合 - ・9級10号
神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限される場合 - ・12級13号
局部に頑固な神経症状を残す場合
むちうち
いわゆる、むちうちは、頚椎に衝撃を受けたことが原因で神経の圧迫・損傷が起きた結果、しびれや痛みなどの神経症状が現れていると考えられる状態をいいます。
なお、むちうちは医学的用語ではありません。正式な診断名は頚椎捻挫などになります。
むちうちの特徴はレントゲンやMRIなどの画像診断でも医学的所見が発見できないケースも多いことです。そのため後遺障害等級の認定をめぐって争いになりやすい傾向があります。
むちうちの場合、次のような後遺障害等級が認定される可能性があります。
- ・12級13号
局部に頑固な神経症状を残すもの - ・14級9号
局部に神経症状を残すもの
12級と14級を分けるポイントは、医学的に証明可能かどうかという点です。
むちうちによる自覚症状が検査結果などにより、事故による症状として医学的に証明できる場合は12級となります。
また、事故の状況などから症状が「事故によって引き起こされたもの」として合理的に説明でき、医学的に推定できる場合は14級になります。
一方、14級か非該当かをめぐって争いになるケースも珍しくありません。たとえば事故態様が軽微な場合では、非該当とされてしまうこともあります。
ただ車両の損傷が軽微でも、首に大きな衝撃が加わることはありますので、一度非該当と判断されたからといってあきらめる必要はありません。実際に症状が出ているのであれば、認定してもらえるように粘り強く交渉を続けることが大切です。
首の後遺障害の相談は弁護士に
首のケガは中枢神経の損傷をも引き起こす可能性があるため、重篤な後遺症の原因になります。
働けなくなって経済的に大きな損失を受けるおそれもありますので、まずはきちんと金銭的な補償を受けることが大切です。
もし後遺障害やその認定についてわからないこと、お困りのことがあればまずは弁護士にご相談いただければと思います。