口の後遺障害
事故によって、あごや歯、唇などが損傷を受け、ものをうまく噛めなくなったり、うまくしゃべれなくなってしまったりすることがあります。
ここでは、口の後遺障害と後遺障害等級について解説します。
口の後遺障害の種類
口の後遺障害には大きく分けて、咀嚼機能の障害と言語機能の障害の2種類があります。
咀嚼機能の障害は、ものを噛む機能に関する障害です。
また、言語機能の障害は、言葉を発音する機能についての障害になります。
咀嚼機能の障害
交通事故が原因でかみ合わせや歯の配列状態、あごの動きが悪くなるなどして、咀嚼機能に障害が起きた場合をいいます。
「咀嚼機能を廃したもの」とは全くものを噛んで食べられなくなり、流動食以外は摂取できない状態をいいます。
また、「咀嚼機能に著しい障害を残すもの」とは噛む力がほぼ失われ、お粥か、これに準じる程度の飲食物以外は摂取できない状態をいいます。
「咀嚼機能に障害を残すもの」とは、ある程度はものを噛んで食べられるものの、きちんと咀嚼できない食べ物がある、または咀嚼が十分にできない食べ物があり、そのことが医学的に確認できる場合をいいます。例えば、柔らかいものは噛めるけれど堅い物は食べられないケースが典型例です。
さらに、口が開きにくいなどの理由から、咀嚼に相当な時間を要する場合も後遺障害として認められる可能性があります。
言語機能の障害
言語機能の障害は、言葉を発する機能に障害が起きた場合をいいます。
言葉の語音は発生するときに使う部位によって、ま行に代表される口唇音、な行に代表される歯舌音、か行に代表される口蓋音、は行に代表される咽頭音の4種類に分類できます。
しかし事故のケガが原因で、口や喉をうまく使えなくなり、一定の音が発音できない(しにくくなる)ことがあるのです。
「言語の機能を廃したもの」とは上記4種ある語音の種類のうち、3種以上の発音ができなくなった状態をいいます。
また、「言語の機能に著しい障害を残すもの」とは、4種の語音のうち2種の発音ができない、あるいは綴音(ある音と他の音とが統合してできた音)の機能に障害が起きたために、会話による意思疎通が難しくなった状態をいいます。
「言語の機能に障害を残すもの」とは、4種の語音のうち、1種の発音ができなくなった状態をいいます。
そのほか発音に問題がない場合であっても、声が極度にかすれてしまった場合は、後遺障害として認定される可能性があります。
後遺障害等級の認定について
口に障害が残ると、ものが食べられない、会話ができないなど日常生活に支障が生じます。
仕事内容にも制約が生まれることから、経済的にも損害が発生するかもしれません。
そこで重要となるのが、相手方の保険会社などからきちんとした補償を受けることです。そして、後遺症に関する補償は後遺障害等級に応じて決まるため、補償を受けるためには後遺症に応じた適切な認定を受けることが大切になります。
咀嚼機能・言語機能の後遺障害等級は両方の障害を考慮して決定され、症状が深刻であるほど等級の数字が小さくなります。
- ・1級2号
咀嚼機能・言語機能両方を廃したものをいいます。 - ・3級2号
咀嚼機能または言語機能が廃したものをいいます。 - ・4級2号
咀嚼機能または言語機能に著しい障害を残すものをいいます。 - ・6級2号
咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すものをいいます。 - ・9級6号
咀嚼及び言語の機能に障害を残すものをいいます。 - ・10級3号
咀嚼又は言語の機能に障害を残すものをいいます。
咀嚼機能・言語機能の障害の程度が違う場合には、併合によって最終的な等級が決まります。
舌・嚥下・味覚障害
舌の異常や嚥下障害についても、咀嚼機能障害についての等級に準じて等級が認定されます。
また、舌や脳の損傷、あご周辺の組織損傷が原因で、味覚に障害に起きることがあります。
味覚脱失については12級相当、味覚減退については14級相当が認定されます。
歯牙障害
歯牙障害は、永久歯が失われたり、著しく欠損したりした場合に認められる障害です。
対象は永久歯であり、親知らずや乳歯の場合は認められないのが原則です。ただし、乳歯の場合については「永久歯が生えない」という医師の証明があれば例外的に障害が認められます。
- ・10級4号
14歯以上に対し歯科補綴を加えたものをいいます。 - ・11級4号
10歯以上に対し歯科補綴を加えたものをいいます。 - ・12級3号
7歯以上に対し歯科補綴を加えたものをいいます。 - ・13級5号
5歯以上に対し歯科補綴を加えたものをいいます。 - ・14級2号
3歯以上に対し歯科補綴を加えたものをいいます。
「歯科補綴を加えたもの」とは、歯をうしなった場合や、歯が大幅に欠けた場合に、クラウンや差し歯などの人工物で補った状態をいいます。
事故によって歯を失った場合はもちろん、ケガの治療の際に抜歯したケース、治療の都合上やむなく歯を削ったり切除したりして歯の著しい欠損が起きたケースも含まれます。
口の後遺障害に関する相談は弁護士に
後遺障害等級の認定に際しては医療機関での診察・検査などさまざまな手続きがあります。また、見た目ではわからない症状については保険会社との間で言い分が食い違い、交渉が難航することもないわけではありません。
もし困ったこと、わからないことがあれば、一度ご相談いただければと思います。