耳の後遺障害
事故のケガによって、耳の一部がなくなってしまったり、耳の機能に障害が出たりすることがあります。
ここでは、こうした耳の後遺障害について解説します。
耳の後遺障害
耳の後遺障害は大きく分けて、外見上の障害と機能障害の2種類に分類できます。
顔の一部である耳は人目に触れやすい部位です。また耳は音を感じ取るという大切な機能を持つ器官でもあり、その機能に障害が起きると日常生活に大きな支障が出てしまいます。
いずれにしても、耳の後遺障害は被害者のQOLに重大な影響を及ぼします。そのため、後遺障害の重さに応じた賠償金を受け取ることが可能です。
なお、後遺障害の重さは「後遺障害等級認定」の等級で判断されます。きちんと補償を受けるためにも、障害に見合った適切な後遺障害等級認定を受けることが大切です。
外見上の障害について
耳殻(いわゆる「耳」と呼ばれる部分)が欠損してしまった場合、外見上大きな変化が生じます。
そのため耳殻の大部分、具体的には軟骨部分の1/2以上が欠損した場合は後遺障害等級が認定されます。
- ・12級4号
片耳の耳殻の大部分を欠損したもの
両耳とも欠損した場合には、併合によって11級が認定されます。
では、欠損した部分が1/2未満だった場合は補償が受けられないのかというと、そういうわけではありません。
顔の一部に人目に付く程度以上の傷跡が残ってしまったということで、外貌醜状と呼ばれる後遺障害が認められる可能性があります。
- ・7級12号
外貌に著しい醜状を残すもの - ・9級16号
外貌に相当程度の醜状を残すもの - ・12級14号
外貌に醜状を残すもの
たとえば耳介の軟骨部分の1/2以上を欠損した場合には、「著しい醜状」として7級12号に該当しますが、1/2未満の場合であっても傷の程度によって9級や12級に認定される可能性があります。
機能障害
耳の機能障害は聴力に関する障害、耳鳴り、耳漏の3種類に分類可能です。
聴力に関する障害
人の声がはっきり聞こえにくくなったり、聴力を完全に失ったりした場合に認められる障害です。聴力が失われた程度、障害が生じた耳の数に応じた等級が認定されます。
なお、実際に後遺障害等級を認定してもらうためには聴力検査が必要になります。
- ・4級3号
両耳の聴力を全く失った場合 - ・6級3号
両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になった場合 - ・6級4号
片耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になった場合 - ・7級2号
両耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になった場合 - ・7級3号
片方の耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になった場合 - ・9級7号
両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になった場合 - ・9級8号
片耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になった場合 - ・9級9号
片耳の聴力を全く失った場合 - ・10級5号
両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になった場合 - ・10級6号
片耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になった場合 - ・11級5号
両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になった場合 - ・11級6号
片耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になった場合 - ・14級3号
片耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になった場合
耳鳴りについて
耳鳴りはどこからも音は聞こえていないのに音を感じるという症状で、神経の損傷や耳の器官が傷ついたことが原因で発症します。
・12級相当
30db以上の難聴を伴い、著しい耳鳴りを常時残すことが他覚的検査により立証可能な場合
・14級相当
30db以上の難聴を伴い、常時耳鳴りがあることが合理的に説明できる場合
「著しい耳鳴りを常時残すことが他覚的検査により立証可能」とは、検査で耳鳴りがあると認められていることを医学的に評価できる場合をいいます。
「耳鳴りのあることが合理的に説明できる」とは、被害者が耳鳴りを訴えていて、しかも、耳鳴りのあることが、その原因から考えて合理的に説明できることをいいます。
つまり、耳鳴りについては、自覚症状があったとしても検査結果で明らかにわかる、あるいは医学的に合理的な説明ができないと後遺症として認めてもらえないのです。さらに30db以上の難聴を伴うことも条件になります。
耳漏について
耳漏は、鼓膜に穴があき、分泌物が流れ出てしまう症状です。
手術により治療をしても耳漏が治らず、かつ30db以上の難聴を伴う場合には後遺障害等級が認定されます。
- ・12級相当
30db以上の難聴で、常時耳漏を残す場合 - ・14級相当
30db以上の難聴で、耳漏を残す場合
目に見えない後遺障害は争点になりやすい
目に見えない後遺障害については認定をめぐって相手方との交渉が難航することがあります。
特に耳鳴りは自覚症状だけでは後遺障害として認定されません。適切な認定を受けるためには、事故に遭ったのちに気になる症状が出たらすぐに病院で必要な検査を受けるなど、いくつか守るべきポイントがあります。
耳の後遺障害認定について悩んでいること、お困りごとがある方は早めに弁護士にご相談いただければと思います。