交通事故における使用者責任 |千葉船橋の交通事故に強い弁護士

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交通事故における使用者責任

使用者責任とは

民法715条には、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と定められています。
これを使用者責任と言います。
 
例えば、会社の従業員が他の人に対して損害を与えた場合は、会社も損害賠償責任を負うという意味です。
交通事故であれば、従業員が運転する営業車により他人が被害を受けた場合は、会社も損害賠償責任を負うことを意味します。
 
会社がこのような責任を負うのは、会社はその従業員を働かせることによって利益を得ているわけだから、その分、損害が発生した場合は、責任を負いなさいよと言う考え方に基づくとされています。
この考え方を報償責任とも言います。
 
使用者責任が成立するためには、使用者と被用者の間に使用関係があることと、被用者が「事業の執行」に際して加害行為をしていることが要件となっています。
使用者と被用者の間の使用関係は、雇用契約のような契約関係がある場合だけでなく、実質的な指揮監督の関係があれば足りると解するのが判例です。
(大判大正6年2月22日)
一方、「事業の執行」と言えるのかについては、様々な判例があります。
 

事業の執行とは?

まず、会社の従業員が、仕事中に営業車を運転している時に交通事故を起こして、他の人にケガを負わせてしまった場合は、被用者が「事業の執行」に際して加害行為をしたことになる点は争いはありません。
このような場合、会社が免責される可能性はほとんどありません。
 
問題となるのは、会社の従業員が仕事を終えた後など、仕事外の時間に、営業車を運転していて、交通事故を起こした場合です。
有名な判例を一つ紹介しましょう。
 

Aは、自動車の販売等を業とする甲会社の従業員です。
仕事が終わった後で、職場近くの映画館で映画を鑑賞しました。
帰りは電車を使うつもりでしたが、終電に間に合いませんでした。
そこで、Aは、甲会社に戻り、甲会社の営業車を運転して帰宅しようとしたところ、その途中でBさんをはねる交通事故を起こしてしまいました。
なお、甲会社では、営業車を私用に使うことを禁止しており、Aの行為は会社内規に違反するものでした。
 
Bさんは、Aと甲会社に対して損害賠償請求を行いました。
加害者であるAに損害賠償責任があることは争いはありませんが、甲会社にも使用者責任があるのかが争われました。

 
裁判所は、「事業の執行」について次のような判断基準を示しました。
 
必ずしも被用者がその担当する業務を適正に執行する場合だけを指すのでなく、広く被用者の行為の外形を捉えて客観的に観察したとき、使用者の事業の態様、規模等からしてそれが被用者の職務行為の範囲内に属するものと認められる場合で足りる。
(最判昭和39年2月4日 民集 第18巻2号252頁)
 
このような考え方を外形標準説と言います。
この事例の場合であれば、Aが甲会社の営業車を運転していることは、他の人から見れば、仕事中に運転しているように見えるわけです。
たとえ、Aが仕事ではなくて家に帰るために運転していたとしてもです。
そのため、Bさんは、Aは仕事中に交通事故を起こしたと主張して、甲会社に使用者責任を追及することができるということになったわけです。
 
この事例は、Aが甲会社の営業車を運転していたために、甲会社も使用者責任を問われた事例でした。
会社の従業員が、勤務の前後に交通事故を起こした事例では、会社も使用者責任を問われることが多いです。
 

会社が使用者責任を負わない事例
民法715条には、先の条文に続けて、「ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」と定められており、会社が監督責任を怠っていなければ、会社は免責されることもある旨が規定されています。
しかし、この但書によって、会社の使用者責任が免責されることはほとんどありません。

 
ただ、裁判では、仕事の帰りの交通事故でも、会社が使用者責任を負わない事例もありました。
次の様な判例があります。
 

Cは乙警備会社の警備員として、工事現場における交通誘導の仕事に当たっていました。
Cは工事現場に直行直帰することを乙警備会社から認められていました。
Cは警備員の制服を着て、バイクに乗り、自宅と工事現場を直行直帰していました。
ところが、Cは工事現場からの帰り道に、自転車に乗っていたDさんに追突する事故を起こしてしまい、Dさんにケガを負わせてしまいました。
そこで、Dさんは、Cと乙警備会社に対して損害賠償請求を行いました。

 
まず、加害者であるCが損害賠償責任を負う点については争いはありません。
では、乙警備会社は使用者責任を負うのでしょうか?
 
外形標準説によれば、Cが警備員の制服を着ている以上、乙警備会社の業務の途中に交通事故を起こしたようにも見えることから、Dさんとしては乙警備会社にも使用者責任を追及するという考え方は筋が通ります。
 
しかし、判例は次のような考え方を示しました。
 

  • ・工事現場への行く途中と帰り道で、Cは乙警備会社の業務、または業務に密接に関連した行為をすることは予定されていなかった。
  • ・乙警備会社は、Cに対して自家用車による通勤を命じたり、これを助長するような行為をしておらず、Cは公共機関などを利用して工事現場に行くことも可能だった。

 
以上の点からして、Cの運転行為は、Cが警備員の制服を着ていたにしても、乙警備会社の業務と密接に結びついていたとは言えない。
よって、乙警備会社は使用者責任を負わない。
(平成27年4月14日判決判例タイムズ1422号344頁)
 
この事例は、民法715条の但書が適用されたわけではなく、そもそも、Cの運転行為が、乙警備会社の業務とは無関係だから、乙警備会社は使用者責任を負わないことを示したものです。
Dさん側としては、Cが乙警備会社の本社に向かう途中だったのではないかと主張することで、乙警備会社の業務との関連性を主張しようとしましたが、裁判所の判断を覆すことはできなかったようです。
 

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津田沼(船橋市、習志野市)で、交通事故の被害に遭われた方は、津田沼総合法律事務所へご相談ください。
交通事故の加害者が会社の従業員で、仕事の途中だったような場合は、加害者本人だけでなくて、加害者を使用する会社に対しても、使用者責任を追及できることが多いです。
一方で、会社側としては、会社の業務とは関係ないと主張して、使用者責任を否定してくることもあるでしょう。
このような場面では、加害者側の主張を鵜呑みにするのではなく、一度弁護士にご相談ください。

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