交通事故後に腕や足が動かしにくくなった 関節可動域制限の後遺障害
交通事故で、腕や足を骨折し治療を受けたものの、交通事故前と比べて、腕や足を動かしにくくなったり、回しにくくなったりした場合は、関節可動域制限の後遺障害が生じている可能性があります。
Contents
1.交通事故による関節可動域制限の後遺障害とは?
交通事故による関節可動域制限の後遺障害は、関節機能障害とも言いますが、交通事故によりケガを負った関節が動かしにくくなる障害です。
つまり、交通事故により腕や足を骨折し、治療を受けたものの、交通事故前よりも手が上がらなくなったとか、腕を回しにくくなった、足が動かしにくくなったような場合です。
被害者が主観的に動かしにくいとか、腕が痛くて上がらないという症状を訴えるのではなく、実際に動かせる角度などを医師が測定し、その数値により、後遺障害認定がなされます。
2.自動値、他動値とは何か?
後遺障害ですから、関節可動域制限は将来にわたり残存するものでなければなりません。
現在は動かせなくても、将来動かせるようになる可能性があるなら、後遺障害とは認定されなくなります。
関節可動域を測定する際の数値として、自動値と他動値があります。
自動値は測定時に被害者が自分で動かすことができる角度を意味しています。
それに対して、他動値は、医師や理学療法士が被害者の腕や足などを掴んで実際に動かしてみて、どの角度まで動かせるかを測定した数値です。
自動値と他動値は必ずしも一致せず、他動値の方が動かせる範囲が広いこともあります。
自動値は自分で動かせる範囲ですから、測定当時は、筋力が回復していなかったり、痛みが引いていなかったりして動かせなくても、将来は他動値の範囲まで動かせるようになる可能性があります。
そのため、後遺障害等級認定では原則として、他動値を基準に判断することになります。
例外は、運動神経麻痺や腱断裂があるため、他動値の数値まで動かすことが現実的に不可能である場合などで、自動値を採用することもあります。
3.主要運動と参考運動とは何か?
関節可動域の検査では、関節を実際に動かしてみて角度を測るわけですが、この動きを「主要運動」、「参考運動」と言います。
主要運動とは日常の重要な動作のことです。
参考運動は主要運動ほどは重要でない動作です。
関節の部位により、運動の内容は異なります。
イメージとしては、ラジオ体操のような動かし方ができるかどうかになります。
主要運動は次のとおりです。
- 肩関節
- 屈曲、外転・内転
- 肘関節
- 屈曲・伸展
- 手関節
- 屈曲・伸展
- 前腕
- 回内・回外
- 股関節
- 屈曲・伸展、外転・内転
- 膝関節
- 屈曲・伸展
- 足関節
- 屈曲・伸展
参考運動は次のとおりです。
- 肩関節
- 伸展、外旋・内旋
- 手関節
- 橈屈、尺屈
- 股関節
- 外旋・内旋
4.関節可動域制限が生じているかどうかの判断方法
関節可動域制限が生じているかどうかは、患側と健側の比較によります。
患側とは、障害が生じている側。
健側は、障害のない側と言う意味になります。
例えば、交通事故で左の腕の関節を負傷したなら、左腕を患側。
右腕を健側と言います。
そして、左腕と右腕の動かせる角度を比較したうえで、左腕がどの程度動かせなくなっているのかで、後遺障害認定がなされます。
5.関節可動域制限の後遺障害認定
後遺障害認定では次のような表現が用いられます。
- 関節の用を廃したもの
- 患側が健側の可動域の10%程度に制限された場合
- 関節の機能に著しい障害を残すもの
- 患側が健側の可動域の2分の1以下に制限された場合
- 関節の機能に障害を残すもの
- 患側が健側の可動域の4分の3以下に制限された場合
具体的な後遺障害等級は、関節の箇所により異なります。
1級
- 4号
- 両上肢の用を全廃したもの
- 6号
- 両下肢の用を全廃したもの
5級
- 6号
- 1上肢の用を全廃したもの
- 7号
- 1下肢の用を全廃したもの
6級
- 6号
- 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
- 7号
- 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級
- 6号
- 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
- 7号
- 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
10級
- 10号
- 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
- 11号
- 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級
- 6号
- 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
- 7号
- 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
このうち、上肢の3大関節とは、「肩関節、肘関節、手関節」の三つ。
下肢の3大関節とは、「股関節、ひざ関節、足関節」の三つを意味しています。
6.関節可動域制限の後遺障害認定では医師の診断が重要
交通事故による後遺障害認定はどのようなものでも医師の診断が大切ですが、関節可動域制限の場合は、とりわけ、医師が後遺障害認定の基準や関節可動域の測定方法を知っているかどうかもポイントです。
関節可動域の測定は、日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会の「関節可動域表示ならびに測定方法」により測定します。
医師がこの測定方法により測定していれば問題ありませんが、中には、いい加減な測定をする医師もいて、そのために、後遺障害認定が難しくなったり、再度測定することになったりと、手間が掛かることもあります。
また、可動域制限が生じた原因を示す画像所見も必要です。
レントゲン、CT、MRI画像により、関節を構成する骨の損傷(器質的損傷)が確認でき、その器質的損傷が可動域制限につながっていることを証明できる程度のものでなければなりません。
7.関節可動域制限の後遺障害認定が否定されてしまう場合
後遺障害診断書に記載した関節可動域の他動値が、後遺障害認定基準を満たしていても、自賠責保険で非該当と認定されてしまうことがあります。
例えば、
- ・測定方法に問題があると思われる場合
- ・可動域制限の内容と画像所見との整合性に問題がある場合
などは、後遺障害認定が否定されてしまいます。
関節可動域の測定は他動値とは言え、被害者や医師が意図的に数値をごまかすこともできてしまうだけに、信用性が低いとされています。
そのため、画像所見も必要になるわけですが、少しでもおかしいと判断されてしまうと、後遺障害認定は難しくなります。
関節可動域制限の後遺障害認定基準については、医師が必ずしも熟知しているとは限りません。
関節可動域の測定やレントゲン、CT、MRIは医師にしかできませんが、どのような後遺障害診断書を作成すればよいのかと言ったノウハウは、交通事故専門の弁護士の方が詳しいことも多いです。
8.交通事故の法律相談は津田沼総合法律事務所へご依頼ください
津田沼(船橋市、習志野市)で、交通事故の被害に遭われた方は、津田沼総合法律事務所へご相談ください。
交通事故による後遺障害認定では、医師と弁護士の連携が必要なこともありますが、関節可動域制限の後遺障害認定は特にその重要性が高い分野です。
医師の測定方法や後遺障害診断書に問題があると、後遺障害認定の基準を満たしていても否定されてしまうこともあります。
これを防ぐためには、医師に何をしてもらうべきなのか、後遺障害診断書作成前に弁護士のアドバイスを受けておくことが大切です。
少しでも悩んでいる方やどうしたらよいか分からない方は、とりあえず、お電話ください。
土日や夜間帯でもすぐに相談に応じます。