高齢者が加害者となる交通事故:特殊な対応が求められる理由 |千葉船橋の交通事故に強い弁護士

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高齢者が加害者となる交通事故:特殊な対応が求められる理由

高齢者が加害者となる交通事故でも、高齢者以外の人が交通事故を起こした場合と同様に交通事故の責任を負います。
高齢者だから、加害者としての過失割合が少なくなることはありません。
ただ、加害者である高齢者が認知症等にかかっていた場合は、その家族が監督義務者として損害賠償責任を負わされてしまう可能性もあります。
 

高齢化の進展と高齢者による交通事故の関係

令和6年版交通安全白書では、「高齢者の交通事故防止について」と題した特集が組まれています。
それによると、令和5年10月1日における65歳以上の人口は3,623万人となっていて、総人口に占める割合(高齢化率)は29.1%となりました。
運転免許保有者数は平成30年に約8,231万人となって、ピークを迎え、以後は年々減少しています。
一方で、65歳以上の運転免許保有者数は逆に上昇しています。
それだけに、高齢者が交通事故の加害者になってしまうケースも増えています。
 
現に、65歳以上の運転者による交通死亡事故件数はすべての年齢層で減少しているものの、減少率の割合は低くなっています。
そのため、全年齢層で比較すると、65歳以上の運転者による交通死亡事故件数の割合が増加しています。
 
年齢層別交通死亡事故件数の割合の推移

年度 65歳未満 65歳以上
平成25年 74.7% 25.3%
令和5年 67.3% 32.7%

 
また、交通死亡事故類型についても、65歳未満だと、歩行者が道路を横断している最中に発生している割合が最も多くなっていますが、高齢運転者の場合は、車両単独事故による交通死亡事故件数の占める割合が高くなっています。
具体的には、
 

  • ・道路を進行中に運転を誤って車線を逸脱し電柱や家屋等に衝突するといった工作物衝突
  • ・車線を逸脱し崖下に転落するなどの路外逸脱

 
等の事故により、運転していた高齢者が亡くなってしまうケースが多いようです。
 
交通死亡事故の人的要因も、65歳未満では、安全不確認の割合が最も多いですが、65歳以上では操作不適がもっとも多くなっています。
また、操作不適が要因のケースでも、65歳未満では、ハンドル操作不適が最も多く、ブレーキとアクセルの踏み間違いは少ないですが、65歳以上になると、ブレーキとアクセルの踏み間違いの割合が増えることも特徴です。
 

高齢者が加害者として交通事故を起こしてしまった場合は?

高齢者が加害者として交通事故を起こしてしまった場合でも、65歳未満の人が交通事故を起こした場合と同様に扱われます。
つまり、加害者が高齢者だからといって、過失割合が低くなると言った措置は取られていません。
 

高齢者が認知症だった場合は家族が交通事故を負うのか?

高齢者が交通事故で被害者に怪我を追わせてしまった場合、民事上の損害賠償責任を負うことになりますが、その前提として、高齢者に責任能力が備わっている必要があります。
 
高齢者が認知症などを発症しており、民事上の責任能力が認められない場合は、高齢者の家族が損害賠償責任を負う可能性があります。
 
民法714条には、責任無能力者の監督義務者等の責任に関する規定があります。
高齢者がその責任を負わない場合において、その高齢者を監督する法定の義務を負う者(監督義務者)は、その高齢者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。という意味です。
監督義務者が責任を免れるためには、その義務を怠らなかったこと等を立証しなければなりません。
 

高齢者の家族の監督責任についての判例

高齢者の家族は、高齢者が認知症等にかかっている場合に、高齢者を監督する責任を負うのかについては、JR東海事件(最判平成28年3月1日)の判決が注目されています。
この事件は交通事故の事案ではありませんが、認知症の高齢者が誤って線路に立ち入り、接触事故を起こして電車を止めたため、鉄道会社から家族に対して多額の損害賠償請求がなされました。
 
この事件では、同居する配偶者や同居していない家族(認知症の高齢者の長男)が監督義務者や監督義務者に準ずべき者に当たらないとの見解が示されました。
もっとも、この事件の配偶者は、認知症の高齢者を介護していたものの、自身も当時85歳で要介護1の認定を受けており、いわば、老老介護の状態にありました。
 
もしも、配偶者に健康上の問題がなく、認知症の高齢者を監督できる状態にありながら、監督義務を怠ったと判断されたとしたら、配偶者が損害賠償責任を負わされていた可能性もあります。
 
この点については、高齢者が加害者となる交通事故でも同様のことが言えます。
例えば、高齢者の家族が、その高齢者が認知症等にかかっていて、まともに車を運転できないことに気づいていたにも関わらず、運転免許返納を促さなかったり、車を運転することを制止しなかったといった事情がある場合は、家族が、民法714条に基づく監督義務者等の責任を問われる可能性があります。
 

高齢者が加害者となる交通事故を防ぐためには?

高齢者が加害者となる交通事故を防ぐためには、安全運転を心がけるべきなのは言うまでもありません。
その他に注意すべきことを挙げておきます。
 

運転免許を自主返納する

高齢者が加害者となる交通事故を防ぐための、最も効果的な方法は、運転免許を自主返納することです。
車が運転できなくなると不便だと感じるかもしれませんが、免許返納時に、公共交通機関のフリーパスや割引券、回数券などがもらえることもあります。
 

高齢者マークは必ずつける

高齢者マーク(もみじマーク)は努力義務とされており、貼らなくても罰則はありませんが、高齢者マーク(もみじマーク)をつけることで、交通事故を防げることもあるのでできるだけ貼ったほうが良いでしょう。
 

安全運転サポート車を選ぶ

近年、交通事故が減少しているのは、安全運転サポート車等の安全な車が普及したことも理由の一つです。
高齢者が、自動車を新たに購入するならば、安全運転サポート車などを選びましょう。
 

まとめ

高齢者が加害者となる交通事故では、高齢者本人だけでなく、高齢者の家族も民事上の損害賠償責任を問われる可能性もあります。
家族としては、高齢者である両親等に認知症等の兆候がうかがえる場合は、できるだけ早く、運転免許の自主返納を促すといった対応を講じておくことが大切です。

交通事故解決のために大切なのはスピードです。

迷っている方も、まずは一度お電話ください。